パビリオンとは何か?イベントや博覧会で注目を浴びる建築の魅力と最新潮流!サーキュラーデザインも話題に

Sep 19, 2025 12:59:30 AM

目次

イベントや博覧会が開催された際に注目される建築物に「パビリオン」があります。この「パビリオン」とはどういったものなのでしょうか。

本記事では、パビリオンの役割や魅力に加えて、最新動向や課題などを解説します。あわせて、2025年大阪・関西万博ルクセンブルクパビリオンの施工をなぜ内藤ハウスが担当したのかについてもご紹介します。

  1. パビリオンとは?イベント建築の役割と可能性

パビリオンとは、万博や展示会、芸術祭などの国際的なイベントで建てられる仮設建築を指します。かつては展示物を収めるための"ハコ"にすぎないこともありましたが、近年では建築そのものがメッセージを語り、来場者の体験そのものをデザインする舞台として位置づけられるようになりました。そこには時代の先端技術や文化的アイデンティティが反映され、社会課題への姿勢や未来への提案が表現されます。

パビリオンは単なる建築物ではなく、訪れる人々に感動や気づきを与える「体験の装置」として、イベント全体の印象を大きく左右する存在となっているのです。


  1. 建築の魅力が伝わる「体験型空間」

現代のパビリオンの大きな特徴は、来場者の五感に訴える「体験型空間」として設計されている点です。光や影の演出、音響、床や壁の素材感、さらには香りや風を取り入れた仕掛けなど、訪れる人が空間そのものを体感できる工夫が随所に盛り込まれています。SNSでの拡散を意識したフォトジェニックなスポットも、現代のパビリオンには欠かせない要素になっています。

こうした斬新な空間を形にするため、内藤ハウスはシステム建築の技術を活用し、施工を通じて設計意図を忠実に具現化しています。複雑な形状にも柔軟に対応できるうえ、組立・解体が迅速に行える特徴により、限られた期間でも完成度の高い体験型空間を提供しているのです。

 


  1. サーキュラー・バイ・デザインとは?持続可能な建築への挑戦

一時的な仮設建築であるパビリオンは、イベント終了後に解体される際、大量の廃棄物が生じることが長年の課題でした。こうした問題に対して注目されているのが、「サーキュラー・バイ・デザイン(Circular by Design)」という考え方です。これは、設計段階から資材の再利用や再構築を前提に計画し、解体後も別の建築物や用途に転用できる仕組みを組み込む設計思想です。

具体的には、鉄骨のモジュール構造や再利用可能な素材を活用することで廃棄を最小限に抑え、解体後も資材が循環するように工夫されています。このような取り組みは、万博や大規模イベントだけでなく、建築業界全体に影響を与える先進的な潮流といえるでしょう。

内藤ハウスが手掛けるKIT-Base/KIT-Base+のように、解体後の再利用可能なシステム建築も、サーキュラー・バイ・デザインの考え方を実際の建築で実現する一例です。


  1. 万博で話題!ルクセンブルクパビリオンと内藤ハウスの施工事例


ここまで紹介してきた“体験型空間”や“サーキュラーデザイン”の潮流を体現する実例が、2025年大阪・関西万博のルクセンブルクパビリオンです。設計はルクセンブルク側のチームが担当し、内藤ハウスはその設計意図を施工によって具現化しました。

このような国家プロジェクトにおいて、大手ゼネコンではなく内藤ハウスが施工会社として選ばれたのは、設計コンセプトへの賛同や高い技術力と熱意がクライアントに評価されたためです。

※プロジェクトの背景や施工の工夫は、特設コンテンツ『BUILD by Naito House「ルクセンブルク・パビリオン」』で順次公開しています。会期後もアーカイブとしてご参照いただけます。


内藤ハウスは、ルクセンブルクの設計チームの要求に応えて、解体・再利用を前提とした先進的な建築を実現しました。軟弱な夢洲人工島の地盤に対応するため、約200個のPCブロック(プレキャストコンクリートブロック)を敷き詰める独自の基礎工法を採用。複雑なフォルムの膜屋根を支える鉄骨は高精度に組み上げられ、外壁には型枠用合板(コンパネ)を使用しました。

これらの施工は解体後の再利用も意識して行われ、膜屋根、PCブロック、コンパネや鉄骨についても再び活用できるよう配慮されています。こうした工法により、資源を循環させるデザイン思想が建物に反映されています。

完成したパビリオンの内部には、来場者が楽しみながら学べる体験型空間が広がります。音と光が連動するインタラクティブ展示でルクセンブルクの街並みや自然を体感したり、伝統的なナインピン・ボウリング「ケーレブン(Keelebunn)」を楽しむこともできます。

このように、建築技術の挑戦と来場者体験、文化的伝統の紹介が一体となることで、ルクセンブルクパビリオンは「体験型建築」の新しいかたちを示しているのです。


パビリオンは一時的な仮設建築物でありながら、国や企業の文化・環境・技術を統合し、価値観を表現する舞台となっています。近年は、資源循環を重視する「サーキュラー・バイ・デザイン」の考え方が建築にも取り入れられ、持続可能性を意識した新しい空間づくりが進んでいます。

2025年大阪・関西万博のルクセンブルクパビリオンはその先進的な実例であり、同時に内藤ハウスが世界的な舞台で挑戦した成果でもあります。その取り組みは、サステナブルで体験価値の高い建築の可能性を示し、独自の文化を持つ国と、挑戦を重ねる企業が共に築いた未来への希望となるでしょう。

 

 詳しくはぜひこちらの記事もご覧ください。

「万博で中小企業が世界と繋がる瞬間!ルクセンブルクが山梨の建設会社を選んだ理由とは?

ライタープロフィール

辻 久(つじ ひさし)
一級建築士 第二種電気工事士

INA新建築研究所を経て独立し、建築設計due代表を務める。現在まで20年以上、一級建築士事務所を運営。住宅、店舗、集合住宅、工場や医療福祉施設など、多数の設計監理実績があり、鉄骨造による設計を得意としている。

HP:https://due2002.com/